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高知地方裁判所 昭和56年(行ウ)6号 判決 1989年1月30日

高知県土佐郡大川村小松四二番地一

原告

有限会社岡村組

右代表者代表取締役

岡村直繁

右訴訟代理人弁護士

田中捷太郎

高知市本町五丁目六番一五号

被告

高知税務署長

中原健

右指定代理人

武田正彦

右同

佐藤公美

右同

岩田康雄

右同

片山三郎

右同

斎藤譲

右同

三宅勝治

右同

香川竹二郎

右同

新田旭

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告が原告に対し昭和五四年一二月二五日付けでなした

(一) 原告の昭和五一年七月一日から同五二年六月三〇日までの事業年度の法人税についての更正のうち所得金額五八三万六四二七円、納付すべき税額一五九万二三〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定(ただし、いずれも審査裁決により一部取り消された後のもの。)

(二) 原告の昭和五二年七月一日から同五三年六月三〇日までの事業年度の法人税についての更正のうち所得金額四二七万〇六六一円、納付すべき税額九二万九〇〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定

(三) 原告の昭和五三年七月一日から同五四年六月三〇日までの事業年度の法人税についての更正のうち所得金額五四五万二八〇六円、納付すべき税額一二六万四二〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定(ただし、いずれも審査裁決により一部取り消された後のもの。)をいずれも取り消す(以下、(一)ないし(三)の各事業年度を順次「五二年度」、「五三年度」、「五四年度」と、同各更正を順次「本件更正(一)」、「本件更正(二)」、「本件更正(三)」と、同各重加算税賦課決定を順次「本件決定(一)」、「本件決定(二)」、「本件決定(三)」という。また、本件更正(一)ないし(三)を「本件各更正」と、本件決定(一)ないし(三)を「本件各決定」という。)。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告の五二ないし五四年度の法人税について、原告がした確定申告及び修正申告、これらに対して、被告がした本件各更正及び本件各決定並びに原告の不服申立てに対して被告がした異議決定及び国税不服審判所長がした審査裁決の経緯は、別表一記載のとおりである。

2  しかしながら、

(一) 本件更正(一)のうち所得金額を五八三万六四二七円として計算した額を超える部分、本件更正(二)のうち所得金額を四二七万〇六六一円として計算した額を超える部分、本件更正(三)のうち所得金額を五四五万二八〇六円として計算した額を超える部分は、いずれも、原告の所得金額を過大に認定したものであるから違法である。

(二) 本件各決定は、所得を過大に認定した本件各更正を前提とする点において違法であり、かつ、法人税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽又は仮装した事実がないのにされた点において違法である。

よつて、請求の趣旨記載の判決を求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1の事実は認めるが、同2の主張は争う。

三  被告の主張

1  五二年度分

(一) 原告の五二年度の所得金額は、原告の修正申告に係る所得金額五八三万六四二七円に次の(1)ないし(4)の各金額を加算した一一八九万六四二七円であり、納付すべき法人税額は三八七万六六〇〇円である。本件更正(一)は、この範囲内のものであるから、適法である。

(1) 外注費の損金否認額 三三八万五〇〇〇円

原告は、別表二記載のとおり、西森建設こと西森従二及び細川掘削こと細川晴源に合計三三八万五〇〇〇円を支払つたとして外注費勘定に計上し、修正申告において五二年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右各支出金は、後述の中西俊夫に対する修繕費及び賃借料として計上された支出金(別表二番号3、5。)とともに、株式会社高知相互銀行一宮支店の高橋亀喜名義及び磯谷ひろみ名義の二口の定期預金に預け入れられたものであつて、原告の経費として支出された事実が存在しないから、五二年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきである。

(2) 修繕費の損金否認額 二一万円

原告は、別表二記載のとおり、中西俊夫に二一万円を支払つたとして修繕費勘定に計上し、修正申告において五二年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右支出金は、前記(1)の西森及び細川に対する外注費として計上された支出金とともに、高知相互銀行一宮支店の高橋亀喜名義及び磯谷ひろみ名義の二口の定期預金に預け入れられたものであつて、原告の経費として支出された事実が存在しないから、五二年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきである。

(3) 賃借料の損金否認額 七三万円

原告は、別表二記載のとおり、掛水幸弘及び中西俊夫に合計七三万円を支払つたとして賃借料勘定に計上し、修正申告において五二年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右掛水に対する支出金は、株式会社阿波銀行高知支店の森元源一郎名義の定期預金に、また、右中西に対する支出金は、前記(1)の西森及び細川に対する外注費として計上された支出金とともに、高知相互銀行一宮支店の高橋亀喜名義及び磯谷ひろみ名義の二口の定期預金にそれぞれ預け入れられたものであつて、いずれも、原告の経費として支出された事実が存在しないから、五二年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきである。

(4) 車両費の損金否認額 一七三万五〇〇〇円

原告は、別表二記載のとおり、川田石油こと川田貴一、中久保自動車こと中久保政明及び土佐建機こと井上義夫に合計一七三万五〇〇〇円を支払つたとして車両費勘定に計上し、修正申告において五二年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右各支払の事実はもとより、右各金員が原告の経費として支出された事実は存在しないから、五二年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきである。なお、井上に対する支出金三九万五〇〇〇円(別表二番号11)は、阿波銀行高知支店の谷次男名義の定期預金に預け入れられたものである。

(二) 原告は、右(一)のとおり、支払の事実がないにもかかわらず、架空の経費合計六〇六万円を計上している。これは、法人税の課税標準の計算の基礎となる事実の隠蔽又は仮装に該当し、右隠蔽又は仮装したところに基づいて五二年度の法人税の納税申告書を提出したのであるから、更正による増差税額に基づき国税通則法六八条一項(昭和五九年法律第五号による改正前のもの。以下同じ。)の規定を適用して重加算税が賦課されるべきである。

原告の五二年度の納付すべき法人税額は、右(一)のとおり、三八七万六六〇〇円であり、そのように更正され場合の増差税額は二二八万四三〇〇円である。これに基づき重加算税額を計算すれば六八万五二〇〇円となるところ、本件決定(一)は、その範囲内のものであるから、適法である。

2  五三年度分

(一) 原告の五三年度の所得金額は、原告の確定申告に係る所得金額四二七万〇六六一円に次の(1)ないし(6)の各金額を加算し、(7)の金額を減算した二四三〇万六五九九円であり、納付すべき法人税額は八五三万〇三〇〇円である。本件更正(二)は、この範囲内のものであるから、適法である。

(1) 外注費の損金否認額 一五三一万四三〇〇円

原告は、別表二記載のとおり、西森従二、細川晴源、山本賀信、山崎利之及び川村幹夫に合計一五三一万四三〇〇円を支払つたとして外注費勘定に計上し、確定申告において五三年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右各支払の事実はもとより、右各金員が原告の経費として支出された事実は存在しないから、五三年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきである。なお、山本に対する支出金七〇万円(別表二番号21)は、後述の同人に対する賃借料として計上された六〇万円(同32)とともに、株式会社伊豫銀行高知支店の阿佐通名義の定期預金に預け入れられ、山崎に対する支出金は、後述の同人に対する賃借料として計上された六一万五〇〇〇円(同33)とともに、株式会社四国銀行秦泉寺支店の無記名の定期預金に預け入れられたものである。

(2) 修繕費の損金否認額 五二万五〇〇〇円

原告は、別表二記載のとおり、井上義夫及び武市健一に合計五二万五〇〇〇円を支払つたとして修繕費勘定に計上し、確定申告において五三年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右各支払の事実はもとより、右各金員が原告の経費として支出された事実は存在しないから、五三年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきである。

(3) 賃借料の損金否認額 四一七万五〇〇〇円

原告は、別表二記載のとおり、西森従二、細川晴源、山本賀信及び山崎利之に合計四一七万五〇〇〇円を支払つたとして賃借料勘定に計上し、確定申告において五三年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右各支払の事実はもとより、右各金員が原告の経費として支出された事実は存在しないから、五三年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきである。なお、西森に対する支出金五〇万円(同27)は、高知相互銀行久万川橋支店の高橋亀喜名義の定期預金に預け入れられ、同じく五〇万円(同28)は、高知信用金庫下街支店の岡村直継名義の定期預金に預け入れられたものである。また、山本に対する支出金六〇万円は、前記(1)の同人に対する外注費として計上された支出金七〇万円(同21)とともに、伊豫銀行高知支店の阿佐通名義の定期預金に、山崎に対する支出金六一万五〇〇〇円は、前記(1)の同人に対する外注費として計上された支出金四八万五〇〇〇円(同23)とともに、四国銀行秦泉寺支店の無記名の定期預金に、それぞれ預け入れられたものである。

(4) 車両費の損金否認額 一三万円

原告は、別表二記載のとおり、中久保政明に一三万円を支払つたとして車両費勘定に計上し、確定申告において五三年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右支出金は、次の川田貴一に対する燃料費として計上された一二万六〇〇〇円(同37)とともに、高知相互銀行久万川橋支店の岡村重和名義の定期預金に預け入れられたものであつて、原告の経費として支出された事実が存在しないから、五三年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきである。

(5) 燃料費の損金否認額 五二万二〇〇〇円

原告は、別表二記載のとおり、川田貴一に合計五二万二〇〇〇円を支払つたとして燃料費勘定に計上し、確定申告において五三年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右各支払の事実はもとより、右各金員が原告の経費として支出された事実は存在しないから、五三年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきものである。なお、川田に対する支出金一二万六〇〇〇円(同37)は、右中久保に対する支出金一三万円とともに、高知相互銀行久万川橋支店の岡村重和名義の定期預金に預け入れられたものである。

(6) 受取利息の計上漏れ 四万〇三一八円

別表三の阿佐銀行高知支店の谷次男、森元源一郎各名義の二口の定期預金は原告に帰属するところ、原告は確定申告において、当期に発生した利息四万〇三一八円を益金に算入していないが、右は益金に算入されるべきものであり、原告の申告所得金額に加算すべきである。

(7) 未納事業税認定損額(減算) 六七万〇六八〇円

本件更正(一)によつて増加した所得金額は五八八万円であり、これに係る五二年度分の未納事業税の額は六七万〇六八〇円があるから、その税額を五三年度の所得金額の計算上損金に算入する。

(一) 原告は、右(一)のとおり、支払の事実がないにもかかわらず、架空の経費合計二〇六六万六三〇〇円を計上し、収益四万〇三一八円を計上していない。これは、法人税の課税標準の計算の基礎となる事業の隠蔽又は仮装に該当し、右隠蔽又は仮装したところに基づいて五三年度の法人税の納税申告書を提出したのであるから、更正による増差税額に基づき国税通則法六八条一項の規定を適用して重加算税が賦課されるべきである。

原告の五三年度の納付すべき法人税額は、右(一)のとおり、八五三万〇三〇〇円であり、そのように更正された場合の増差税額は七六〇万一三〇〇円である。これに基づき重加算税額を計算すれば二二八万〇三〇〇円となるところ、本件決定(二)は、その範囲内のものであるから、適法である。

3  五四年度分

(一) 原告の五四年度の所得金額は、原告の確定申告に係る所得金額五四五万二八〇六円に次の(1)ないし(7)の各金額を加算し、(8)及び(9)の各金額を減算した二四七三万六四九八円であり、納付すべき法人税額は八九七万二一〇〇円である。本件更正(三)は、この範囲内のものであるから、適法である。

(1) 外注費の損金否認額 一一六〇万円

原告は、別表二記載のとおり、西森従二、山本賀信、川村幹夫、橋田正市及び又川浩に合計一一六〇万円を支払つたとして外注費勘定に計上し、確定申告において五四年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右各支払の事実はもとより、右各金員が原告の経費として支出された事実は存在しないから、五四年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきである。なお、西森に対する支出金一三〇万円(別表二番号39)及び山本に対する支出金一二五万円(同45)は、それぞれ、高知相互銀行久万川橋支店の阿佐通名義の各定期預金に預け入れられ、又川に対する支出金は、伊豫銀行高知支店の岡村重和名義の定期預金に預け入れられたものである。また、山本に対する支出金一二〇万円(同42)は、同人の自動車購入資金として貸付けたもので、損金ではなく貸付金として経理すべきものである。

(2) 労務費の損金否認額 九七万五二〇〇円

原告は、別表二記載のとおり、山本賀信に合計九七万五二〇〇円を支払つたとして労務費勘定に計上し、確定申告において五四年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右各支払の事実はもとより、右各金員が原告の経費として支出された事実は存在しないから、五四年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきである。

(3) 修繕費の損金否認額 四五万六〇〇〇円

原告は、別表二記載のとおり、シバテンこと岩本秀治に合計四五万六〇〇〇円を支払つたとして修繕費勘定に計上し、確定申告において五四年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右各支払の事実はもとより、右各金員が原告の経費として支出された事実は存在しないから、五四年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきである。

(4) 賃借料の損金否認額 七四二万円

原告は、別表二記載のとおり、西森従二、井上義夫、川村幹夫、橋田正市、又川浩及び岩本秀治に合計七四二万円を支払つたとして賃借料勘定に計上し、確定申告において五四年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右各支払の事実はもとより、右各金員が原告の経費として支出された事実は存在しないから、五四年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきである。なお、又川に対する支出金及び岩本に対する支出金四〇万円(同67)は、伊豫銀行高知支店の川村ヒロキ名義の定期預金に預け入れられたものである。

(5) 雑費の損金否認額 一四万八〇〇〇円

原告は、別表二記載のとおり、中久保政明に一四万八〇〇〇円を支払つたとして雑費勘定に計上し、確定申告において五四年度の損金の額に算入している。

しかしながら、右支払の事実はもとより、右金員が原告の経費として支出された事実は存在しないから、五四年度の損金の額に算入されるべきものではなく、原告の申告所得金額に加算すべきである。

(6) 減価償却費の損金否認額 三四万九九九〇円

原告は、租税特別措置法四五条の二第一項(中小企業者の機械等の特別償却)の規定(昭和五五年法律九号による改正前のもの。以下同じ。)を適用して減価償却費を計算し、右三四万九九九〇円を損金の額に算入しているが、原告は青色申告書を提出していないから、同条項の適用がなく、損金算入できない。したがつて、右金員は原告の申告所得金額に加算すべきである。

(7) 受取利息の計上漏れ 三八万二九四四円

別表三の阿波銀行高知支店の森元源一郎名義の定期預金、高知相互銀行久万川橋支店の岡村重和、高橋亀喜各名義の定期預金、同相互銀行一宮支店の磯谷ひろみ、高橋亀喜各名義の定期預金、高知信用金庫下街支店の岡村直継名義の定期預金は、いずれも原告に帰属するところ、原告は確定申告において、当期に発生した利息合計三八万二九四四円を益金に算入していないが、右は益金に算入されるべきものであり、原告の申告所得金額に加算すべきである。

(8) 未納事業税認定損額(減算) 一八二万〇二二〇円

本件更正(二)によつて増加した所得金額は一五八五万〇五一二円であり、これに係る五三年度の未納事業税の額は一八二万〇二二〇円があるから、その税額を五四年度の所得金額の計算上損金に算入する。

(9) 寄付金の損金算入額(減算) 二二万八二二二円

原告は、寄付金として経理した三〇万円のうち二二万八二二二円につき、法人税法三七条二項の規定により、当期の損金額から除外しているが、五四年度の所得金額は原告の申告額を超過するものであり、右金員も損金算入限度額の範囲内となるので、これを損金に算入する。

(二) 原告は、右(一)のとおり、支払の事実がないにもかかわらず、架空の経費合計二〇五九万九二〇〇円を計上し、収益三八万二九四四円を計上していない。これは、法人税の課税標準の計算の基礎となる事実の隠蔽又は仮装に該当し、右隠蔽又は仮装したところに基づいて五四年度の法人税の納税申告書を提出したのであるから、更正による増差税額に基づき国税通則法六八条一項の規定を適用して重加算税が賦課されるべきである。

原告の五四年度の納付すべき法人税額は、右(一)のとおり、八九七万二一〇〇円であり、そのように更正された場合の前記隠蔽仮装事実に係る増差税額は七七〇万七九〇〇円である。これに基づき重加算税額を計算すれば二三一万二一〇〇円となるところ、本件決定(三)は、その範囲内のものであるから、適法である。

四  被告の主張に対する認否及び原告の反論

1  認否

原告が別表二記載の支出があつたとしてそれらを各年度の損金の額に算入していること、別表二の番号1、2、13、14、15の一部、18、27ないし29、38ないし40、45、55ないし59につき、同表記載の支払先に対し支出がなかつたことを認めるが、被告主張の各加算額は否認し、原告が課税標準の計算の基礎となるべき事実を隠蔽又は仮装したとの主張を争う。

2  反論

(一) 原告は、別表四記載のとおり、各支出を行つており、それらの金額はいずれも損金の額に算入されるべきものである。

なお、右支出金の中には、帳簿上の記載と現実の支出とが食い違つているものがあるが、実質課税の原則からすれば、名目はともあれ、業務遂行上必要な費用として法人税法二二条三項にいう損金の額に算入されるべきである。

(二) 被告は、原告が資産の一部を架空名義の定期預金として経理上除外し、さらにその定期預金の受取利息についても隠蔽していると主張するが、別表五記載のとおり、被告主張の定期預金はいずれも原告に帰属するものではない。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、本件各更正及び各決定に原告主張の違法が存するか否かについて判断する。

1  損金否認額について

(一)  成立に争いのない乙第六号証の四、同号証の六のイ、第一〇号証の二、第一一号証の二の一のイ、同号証の二の二のイ、第一二号証の二、第一三号証の二の一、二、第一四号証の二のイ、第一五号証の一のイ、第二〇号証、第二二ないし第二四号証、第二六ないし第三三号証、第三五号証、第三八ないし第四一号証、第四三ないし第六一号証、第六三ないし第七五号証、第八〇号証、第八二号ないし第八五号証、第八七号証、第九〇ないし第九二号証、第九三号証の一ないし三、第九四、第九五号証、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第二ないし第五号証、第三六号、第三七号証、第四二号証、第六二号証、第七七ないし第七九号証、第八一号証、第八六号証、第八九号証、証人浜田一水の証言により真正に成立したものと認められる乙第六号証の二、第七号証の二の一、二、第八号証の二の一、二、証人村田一の証言により真正に成立したものと認められる乙第一六号証の二、証人浜田一水、同村田一、同金谷園子、同坂本禎男、同濱口静治、同井上義夫、同岩本秀治、同山本賀信の各証言(ただし、証人井上義夫、同岩本秀治、同山本賀信の各証言については、後記措信しない部分を除く。)、原告代表者の尋問の結果(ただし、後記措信しない部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1) 原告は、土木工事の請負を業とする有限会社であるが、株式会社高知相互銀行久万川橋支店(以下「支払銀行」ともいう。)に当座預金口座を有し、同支店を支払人とする小切手を振り出すことで取引先に対するほとんどの支払を行い、通常、事務所にまとまつた現金を保管していなかつた。支払の大半については、原告の事務員が決裁日に取引先からの請求書に基づき、小切手を作成して行つていたが、事務員の退社後原告代表者やその妻が小切手を振り出して支払をすることもあつた。後者の場合には、同人らが小切手帳の控書部分(みみ)に支払内容を記載し、後日事務員がそれを見てその都度会計帳簿に記載したが、その支払に対応する領収書は、小切手帳に挟んであつたり、後日支払先の者が事務所に持参したり、原告代表者がもらつてきて事務員に渡したりしたほか、結局もらえないものもあつた。そのようにそろわない領収書の分については、原告の事務員金谷園子が支払先名義の領収書を偽造して帳尻合わせをすることもあつた。原告は経理の指導を特定の税理士に依頼してあつたが、支出はそのために振り出した手形・小切手て確認されたため、税理士が支出に対応する領収書を確認することはなかつた。

(2) 本件に関係する原告振出の小切手及び約束手形の振出後の状況は、別表六記載のとおりである。同表に記載するとおり、原告振出の小切手で支払銀行以外の金融機関に持参されたものは、そこで他店小切手として当日設定の定期預金の原資として受け入れられ(ただし、同表番号21については注3記載のとおり。)、その後同金融機関を通じて取り立てられて定期預金となつた。また、支払銀行に持参され換金された場合でも、同表番号17ないし19、39、41は、その小切手金(同19については小切手金の一部)を原資として、同日そこで定期預金が設定された。

(3) 西森従二は、西森建設の名称で土木工事の請負業を営む者であり、昭和五二年一一月ころから原告の下請業者として原告との取引が始まつたが、次のとおり、現実の支払を伴わない架空の領収書(以下、単に「架空の領収書」という。)を発行した。なお、番号1、3は以前西森建設の経理を担当していた右西森の実父が作成したものであり、4以降はその後経理を引き継いだ右西森の妻ちづかが原告代表者から頼まれて作成したものである。

<省略>

(4) 細川晴源は、細川掘削という名称で建設機械持込みで土木作業などをしていた者であるが、原告との取引は、昭和五〇年七月ころ一回原告の下で働いたことがあるだけで、それ以外に全くない。細川は、時々稲田民司に仕事を手伝つてもらい、同人に集金を任せていたことから、稲田は、細川に無断で、次のとおり、細川名義の架空の領収書を原告に発行した。

<省略>

(5) 中西俊夫は、昭和五三年二月ころまで自動車用のオイル販売業を営んでいた者であるが、原告との取引は、昭和四五、六年ころ一度コンプレッサーのオイル交換をしたことがあるだけで、その代金も四〇〇〇円程度のものであつた。なお、中西は、他の者との取引に際し、オイル交換の作業で手が汚れてその場で領収書が書けないことがあり、そのような場合金額を記載していない領収書を取引先に渡すことが時々あつた。

(6) 掛水幸弘は、土木工事の下請業を営む者であり、昭和五一年から五五年ころまで断続的に原告の下請をしたが、原告提出に係る昭和五二年五月一六日付額面四五万円の小切手を原告から受け取つたことはなく、その小切手金の授受もない。

(7) 川田貴一は、川田石油の名称でガソリンスタンドを経営する者であり、原告とは古くから軽油の販売等の取引がある。川田は、原告代表者から頼まれて、次のとおり、架空の領収書を発行した。

<省略>

(8) 中久保政明は、原告の事務所近くにおいて、中久保自動車の名称で自動車修理業を営む者であり、原告とも乗用自動車やトラックの修理で取引があつたが、原告との取引はいずれも一〇万円未満のものであるのに、原告代表者の妻や原告の事務員から頼まれ、一〇万円を超える取引があつたかのような架空の請求書及び領収書を発行したことがある。

(9) 井上義夫は、土佐建機の名称で土木機械の販売等を行つている者であり、原告とも土木機械の販売や修繕、リース等の取引があつた。その場合の集金は井上の妻早苗が担当し、中古車の販売代金については約束手形で、それ以外は原告振出の小切手で支払を受けたが、別表六の番号1、3、21、31の小切手は受け取つておらず、小切手金の授受はない。

(10) 山本賀信は、農業のほか土木工事の労務などに従事していた者であるが、昭和五六年六月一五日高松国税局の職員が原告との昭和五三年中の取引状況について質問に赴いた際、それに関する売掛帳等の帳簿類を保存しておらず、原告との取引状況についてもあいまいな返答しかしなかつた、山本は、昭和五三年四月二九日大石土建株式会社を離脱した後、同年五月三〇日から翌五四年四月一七日までの間自己の労働による収入はないと認定されて雇用保険法に基づく失業給付を受けており、また、町民税につき、日雇労務者としての給与所得六〇万円と農業所得六三万一二四〇円の合計一二三万一二四〇円を昭和五三年分の所得として申告している。山本は、同五三年七月一七日、原告から新車購入資金の借受として別表六記載の約束手形三通の振出を受け、これを高知日産自動車株式会社に裏書譲渡して同社から車を購入した。

(11) 山崎利之は、土木機械を賃貸し、自らもその運転手として稼働するなどしていたものであり、昭和五〇年ころから明治建設有限会社の林道工事などに従事していた。昭和五三年四月から同年八月までの間も、同人所有のユンボとローダーショベル各一台を同社に貸与し、自らもその運転手として明治建設の作業現場で稼働していた。その間、病気や降雨のため山崎が現場の仕事を休んだことはあつたが、他の業者の工事に土木機械持ち込みで従事したことはなかつた。

(12) 川村幹夫は、土木工事の下請業者であり、原告とも昭和五三年ころ取引があつたが、原告代表者から頼まれるなどして、次のとおり、架空の領収書を発行した。

<省略>

(13) 武市健一は、自動車板金塗装業者であるが、原告とは全く取引関係がない。

(14) 橋田正市は、土木工事の下請業者であり、原告とは桑の川一四林道改良工事と笹ヶ峰復旧治山新設工事を原告から下請した取引がある。橋田は、次のとおり、その都度原告代表者から頼まれて架空の領収書を発行した。

<省略>

(15) 又川浩は、昭和五一年四月ころから同五三年八月ころまで大成建設株式会社の下請仕事などを行つていたが、ダンプカーやユンボなどの土木機械を持たず、人夫を連れて労務を提供するだけであった。同人は、昭和五三年以降、同五五年八月妻と離婚するまでどこの下請もせず無収入であり、一一月心不全で死亡したが、原告代表者とは同郷人で面識があつた。

(16) 岩本秀治は、シバテンの名称で自動車の修理・解体・リースなどを行つている者であるが、昭和四八年以前は土木工事の下請業をしており、原告の下請をした関係で転業後も原告と取引がある。岩本は、原告代表者から頼まれて、次のとおり、架空の領収書を発行した。

<省略>

以上の事実が認められ、証人井上義夫、同岩本秀治、同山本賀信の各証書、原告代表者の尋問の結果、甲第二、第五、第九、第一〇、第一二、第一三号証、第四一号証の二ないし七、九ないし一一、一四、一八、二一、二五、二七ないし三二、三六のうち右認定に反する部分は、前記浜田一水、村田一、坂本禎男及び濱口治の各証言並びに乙第四、第五号証、第七号証の二の一、二、第八号証の二の一、二、第一六号証の一、二、第三六、第三七、第六二、第七九、第八六号証に照らし、採用しない。

(二)  原告主張の支払先と帳簿上の支払先が一致するものについて

原告主張の支払事実を要約し、これと併せて、原告がその支払事実を裏付けるものと主張する会計帳簿の一部(甲第四一号証の一ないし三六)及び原告提出の領収書の記載内容、並びにそれらに対応すると認められる別表記載の小切手又は約束手形の状況を一覧表にすると、別表七のとおりになる。(同表の原告主張の領収書欄の●は、前記(一)で認定した事実により、架空の領収書と認められるもの。)そこで、まず、原告主張の支払先と帳簿上の支払先が一致するものにつき、検討する(以下、単に「番号」という場合は別表七の番号である。)。

(1) 中西俊夫、掛水幸弘、中久保政明、井上義夫、細川晴源、橋田正市、又川浩及び岩本秀治に対する支払(番号4ないし11、15、18、19、29、33、41、42、45ないし51、58ないし60)について

前記(一)で認定した事実によれば、これらの支払がなかつたことが認められる。

(2) 山本賀信に対する支払(番号22ないし26、37ないし39、43、44)について

番号38の支払については、別表六記載の約束手形三通が対応するが、これは前記(一)で認定したとおり、山本に対する貸付金として振り出されたものであつて、賃借料の支払とは認められない。

その他の支払につき、山本は原告の主張に沿う旨の証言をするが、以下の事情に照らせば同証言は信用できない。すなわち、同証言によれば、山本は、原告から工事代金として番号40の一二五万円の支払を受けた(原告はこれを阿佐通に対する支払であると主張している。)が阿佐通が山本に代わつて工事を行つていたことから、その金を原告から阿佐通に渡してもらうべく、そのまま原告の事務所に置いてきた旨供述するが、前記(一)で認定したところによれば、右一二五万円は別表六の番号41の小切手として振り出され、裏書人欄に山本賀信と記載されて支払銀行で換金された後、同日中に阿佐通名義の一二五万円の定期預金になつていることが認められ、真実右小切手が原告から阿佐に渡されて同人が右定期預金を設定したのであれば、裏書人欄に山本の氏名を記載する筈はなく、右山本証言ではこの点説明がつかない。また、山本が工事代金及び賃貸料として合計一三〇万円の支払を受けたと証言する番号25、26は、前記(一)で認定したように、これに対応する小切手(別表六番号23)がそのまま阿佐通名義の定期預金にされており、矛盾する。その他、前記山本の証言は不自然な箇所が随所に見られ、それ自体信用性が低いうえ、同人が発行したとする領収書には一枚の領収書で記名の横に押捺された印鑑と収入印紙上に押捺された印鑑が異なるものがあること(甲第三一号証)、前記(一)で認定した山本の国税局職員に対する応答態度、失業保険の受給状況及び町民税の申告内容等を併せ考えれば、前記山本の証言は信用できない。また、右の事情に加え、番号22に対応する領収書が証拠として提出されていないことなども勘案すると、原告の主張に沿う原告代表者の供述も信用できない。なお、証人金谷園子は、同人が現金化した小切手金を山本賀信に原告の申告金として渡したかもしれない旨証言しているが、それ自体はっきりした記憶ではなく、これをもつて番号43、44の支払を裏付けるものとはいえない。甲第一号証の一、二、第二七号証の一ないし四、第二八ないし第三三号証、第四一号証の一二、一三、二三、二五、二六のうち原告の主張に沿う部分は、右に考察した事情に照らし、採用しない。したがつて、番号38以外についてもそのような申告はなかつたものと認められる。

(3) 山崎利之に対する支払(番号27、28)ついて

番号27、28の支払につき、領収書(甲第五二号証)をみると、但書の記載から、昭和五三年五月二一日から同年六月末日までのショベル・ユンボの賃借料とそのころの工事代金に対する支払に対応するものとして発行された領収書であると考えられるところ、前記(一)で認定したとおり、山崎はユンボ及びローダーショベルを所有し、これを持ち込んで工事現場の仕事に従事していたものであるが、同年四月から同年八月までの間は、明治建設以外では稼働しておらず、右領収書はこの点矛盾する。また、この支払に対応する別表六の番号25の小切手は、振出の翌日支払銀行で換金されているが、成立に争いのない乙第九号証の二によれば、同日四国銀行秦泉寺支店において、右小切手と同額の定期預金が無記名で設定されていることが認められ、原告が、この預金は原告代表者個人の収入等を定期預金としたものであると主張して原告代表者との関連を認めていること、右預金の金額及び設定日が前記小切手の金額及び換金日と一致すること、四国銀行秦泉寺支店と支払銀行が比較的近距離にあることなど併せて考えると、原告主張の支払の事実はなく、支払に使用したとして振り出された小切手は支払銀行で換金された後、四国銀行秦泉寺支店で無記名の定期預金設定のために用いられたものと認めることができる。原告代表者の尋問の結果、甲第八、第五二号証、第四一号証の一三のうち原告の主張に沿う部分は、右に考察した事情に照らし、採用しない。

(三)  原告主張の支払先と帳簿上の支払先が一致しないものについて(番号1ないし3、12ないし14、16、17、20、21、30ないし32、34ないし36、40、52ないし57)

成立に争いのない乙第一号証、原告代表者の尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件訴訟において初めて帳簿上の支払先と異なる支払先を主張するに至つたもので、異議申立及び審査請求においてはそのような主張はしていないことが認められ、原告の前記支払の主張はそれ自体すでに信用性が乏しい。原告代表者の尋問によつても、本件訴訟に至るまで主張されなかつた点につき、了解可能な説明がなされないばかりか、それらの支払が帳簿上の記載と相反する合理的理由も示されていない。また、番号1ないし3、14、21、31、32、53ないし55、57についてはそれらに対応する領収書が証拠として提出されておらず、領収書が提出されている分についても、番号30以外はその支払のため振り出された小切手の裏書名義人と領収書の作成名義人が異なるうえ、番号30についても支払のため振り出された小切手の一部が他人名義の定期預金になつていることなど考え併せれば、原告の主張する支払の事実はなかつたものと認められる。原告代表者の尋問の結果、証人大谷敏幸、同阿佐通、同西谷農夫雄の各証言、甲第二、第三、第四、第六、第七、第一一、第一四、第二六、第三四、第三六ないし第四〇、第四六、第四七、第四九号証のうち原告の主張に沿う部分は、右に考察した事情に照らし、採用しない。

(四)  被告の否認した支払金につき原告の反論がないものについて

原告は、被告が損金算入を否認した支払金のうち別表二の番号6、7、22、24、26、30、31、35ないし37、43、46、48、60、61についてなんら反論をしていないが、このような原告の弁論態度及び前記(一)で認定した事実に照らせば、そのような支払はなかつたものと認められる。

2  受取利息の計上漏れについて

前記1で認定したとおり、原告が主張する支払の事実はいずれもなかつたことが認められ、それらに対応する小切手を原資として設定された別表六の定期預金も、原告が他人名義で設定したものと認められる。そして、前掲乙第一、第五六、第五九、第七四、第七五、第八五号証、成立に争いのない第七六号証及び弁論の全趣旨によれば、右の定期預金のうち別表六の番号1(谷次男名義)、2(森元源一郎名義)、4ないし6(磯谷ひろみ名義、高橋亀喜名義)、17及び18(岡村重和名義)、19(高橋亀喜名義)、20(岡村直継名義)については、五三年度及び五四年度の各末日において、別表記載のとおり当該年度に発生した利息の額があることが認められる。

3  本件各更正及び各決定について

当事者間に争いのない事実、前掲乙第一号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、別表二のとおりの支出があつたとしてそれらを五二年度ないし五四年度の各損金の額に算入し、右2で認定した預金利息を五三年度及び五四年度の益金に算入していないこと、五四年度の損金につき、同年度の確定申告に青色申告書を提出していないのに、租税特別措置法四五条の二第一項の規定を適用して減価償却費三四万九九九〇円を損金の額に算入していることが認められる。そして、前記1および2で認定したところによれば、右架空支出金の損金算入、当期発生の利息の益金除外は、法人税の課税標準の計算の基礎となる事実を隠蔽又は仮装し、その隠蔽又は仮装したところに基づき法人税の納税申告書を提出した場合に該当すると認められるから、更正による増差税額に基づき国税通則法六八条一項を適用して重加算税が賦課されなければならない。

原告が五二年度の損金に算入した架空支出金は合計六〇六万円であるから、原告の五二年度分の所得金額は、原告の修正申告に係る所得金額五八三万六四二七円に右六〇六万円を加算した一一八九万六四二七円であり、この範囲内の金額を原告の五二年度の所得金額とする本件更正(一)に所得過大認定の違法はない。したがつて、本件更正(一)による増差税額に基づき重加算税を賦課した本件決定(一)にも違法はない。

また、原告が五三年度の損金に算入した架空支出金は合計二〇六六万六三〇〇円であり、益金不算入の利息は合計四万〇三一八円である。他方、前述のとおり、本件更正(一)によつて原告の五二年度の課税標準(所得金額)が五八八万円増加するところ、これに対応する未納事業税六七万〇六八〇円は直前年度分の事業税として五三年度の損金に算入できるから、原告の五三年度分の所得金額は、原告の確定申告に係る所得金額四二七万〇六六一円に右二〇六六万六三〇〇円及び四万〇三一八円を加算し、六七万〇六八〇円を減算した二四三〇万六五九九円であり、この範囲内の金額を原告の五三年度の所得金額とする本件更正(二)に所得過大認定の違法はない。したがつて、本件更正(二)による増差税額に基づき重加算税を賦課した本件決定(二)にも違法はない。

さらに、原告が五四年度の損金に算入した架空支出金は合計二〇五九万九二〇〇円であり、益金不算入の利息は合計三八万二九四四円である。また、原告が五四年度の損金に算入した前記の減価償却費三四万九九九〇円は、青色申告書を提出する者でなければ租税特別措置法四五条の二第一項は適用されないから、これを損金に算入することはできない。他方、前述のとおり、本件更正(二)によつて原告の五三年度の課税標準(所得金額)が一五八六万〇五一二円増加するところ、これに対応する未納事業税一八二万〇二二〇円は直前年度分の事業税として五四年度の損金に算入できる。また、被告が、主張するように、原告が五四年度の寄付金として経理しながら損金から除外していた二二万八二二二円も同年度の損金に算入することにすると、結局、原告の五四年度の所得金額は、原告の確定申告に係る所得金額五四五万二八〇六円に、右二〇五九万九二〇〇円、三八万二九四四円及び三四万九九九〇円を加算し、右一八二万〇二二〇円及び二二万八二二二円を減額した二四七三万六四九八円となる。本件更正(三)は、この範囲内の金額を原告の五四年度の所得金額とするもので、所得過大認定の違法はなく、本件更正(三)による増差税額に基づき重加算税を賦課した本件決定(三)にも違法はない。

三  以上の次第で、原告の請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山脇正道 裁判官 前田博之 裁判官 政岡克俊)

別表一

(昭和五二年度)

<省略>

(昭和五三年度)

<省略>

(昭和五四年度)

<省略>

別表二

昭和五二年度分の加算額明細表

<省略>

昭和五三年度分の加算額明細表(受取利息の計上漏れを除く。)

<省略>

昭和五四年度分の加算額明細表(受取利息の計上漏れを除く。)

<省略>

別表三

定期預金及び受取利息の明細表

<省略>

別表四

昭和五二年度分の損金一覧表

<省略>

昭和五三年度分の損金一覧表

<省略>

昭和五四年度分の損金一覧表

<省略>

別表五

定期預金の帰属についての原告の主張

<省略>

別表六

1.原告振出に係る小切手

<省略>

注1 乙号証と表題のある欄の記載は、当該小切手の被告提出書証目録番号である。

注2 取立銀行・交換日の欄に日付と「換金」と記載のあるものは、当該年月日に高知相互銀行久万川橋支店に小切手が持参され支払いが行われたもの。そのうち※のあるものは、同相互銀行の営業時間を過ぎて持参されたため、出納印が翌日の日付になっている。

注3 昭和53年6月22日伊豫銀行高知支店において、岡村るみ子名義で20万円の定期預金が設定され、また、同女名義の積立定期預金に10万円入金されているが、当該小切手は、そのどちらか又は両方の原資によりされたもの。

注4 昭和55年6月2日解約され、元利金合計1,400,730円は、原告の外注費の支払として有限会社西村工業の高知相互銀行一宮支店の預金口座に同日1,400,330円が送金され、残り400円が送金手数料に充てられている。

注5 昭和55年6月4日解約され、元利金合計1,330,108円は、注3同様、1,199,670円が同日西村工業の前記一宮支店の預金口座に送金され、100円がその送金手数料に充てられ、残り130,338円が同日高知相互銀行久万川橋支店の原告名義の当座預金口座にに入金されている。

2.原告振出に係る約束手形(いずれも支払い場所は高知相互銀行久万川橋支店)

<省略>

別表七

五二年度分関係

<省略>

#1 …原告が主張する帳簿(甲第41号証の枝番号で示す。)。以下同じ。

#2 …原告が主張する領収書(甲号証拠の番号で示す。但し、表番号46、48ないし51については、乙第8号証の2の枝番号である。)。以下同じ。

五三年度分関係

<省略>

※但し、印鑑は井上名義である。

五四年度分関係

<省略>

なお、帳簿上の支払先としては、表番号12、36、57はいずれも西森従二であると主張している。

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